営業研修のノウハウ
名目賃金が下落するような状況であれば、名目の売り上げは減少する。
名目の売り上げが減少すれば、名目の概念である利潤も減少する。
利潤が減少すれば、借金を返済することはできない。
停滞がいつまでも続くことになる。
名目賃金が下落すれば、物価も下落し、売り上げも下落する。
調整はいつまでたっても終わらない。
デフレーションによって生じた実質賃金の上昇が、さらに長期にわたって経済を停滞させる経路がある。
すでに述べたように、実質賃金の上昇は雇用を削減する。
日本的雇用システムにおいて、すでに雇用されている人を解雇することは難しいので、新規採用を控えることになる。
これは、若者の雇用が失われることである。
すなわち、デフレは若者を直撃する。
労働の技能は、その大部分が働いて得られるものである。
働かなければ技能を身につけることはできない。
労働の技能が低下し、生産性が長期にわたって停滞することになる。
この影響がどれほどの大きさであるかを考えてみよう。
年齢ごとの就業者数と失業率を、90年と2001年で比較したものである。
若者の就業が失われたということは、若者が仕事の能力を身につけるチャンスを失ったということだ。
90年代は数で仕事が失われただけではない。
その質でも仕事が失われている。
また、90年代は、役員・正規の職員・従業員の比率が低下している。
表は、この比率が90年と同じで失業率も同じであれば、2001年の役員・正規の職員・従業員数が現実の4763万人ではなくて、それよりも497万人多い5261万人になることを示している。
失われた役員・正規の職員・従業員497万人のうち、半分以上の270万人が34歳以下である。
要するに、90年から2001年にかけて、1102万人(あるべき全就業者の3・0%)の仕事と、497万人(あるべき全就業者の8・0%)の正規雇用が失われたのである。
2001年の失業率が90年と同じであれば、就業者数は現実の6412万人ではなくて、それよりも202万人多い6615万人である。
この失われた就業者2011万人のうち、半分弱の96万人が34歳以下の就業者である。
残りは35歳以上の就業者で、これはすでに仕事の経験がある者の就業が失われたということだろう。
正規雇用の賃金は、それ以外のパート賃金の4倍以上である(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。
したがって、90年から2001年にかけて、全賃金のうちの3・0%+8・0%×若年失業が、長期的にはもっとも大きな問題になるのは明らかである。
N大学のO助教授は、若者が就職できなければ職業能力が身につかず、本人が慢性的に失業に陥りやすい状況になると指摘する。
能力不足の失業が多ければ、経済も停滞する。
正規の仕事を得られた若者と、そうでない若者とのあいだでの職業能力の格差は拡大する。
この拡大は世代を超えて長期化する可能性もある。
すなわち、日本は階層社会に向かうことになる。
さらに、フリーターの若者は経済的に結婚が難しいと指摘されている。
仕事がなければ子どもも生まれず、年金会計はますます難しくなる。
これは、デフレ脱却による真の構造改革を拒否する高齢者への、職業能力を身につけるチャンスを与えられなかった若者の復讐かも若者に仕事がなければ犯罪も増加する。
これは、90年代の所得の停滞のかなりの部分を説明できる数字である。
しかも、若者の仕事が失われたということは、明日に大停滞が終わったとしても、若者が仕事に就けなかったことによる技能の損失が永続的に続くだろうことを示している。
ヨーロッパの国々は高い若年失業率に悩まされてきたが、表3I9に見るように、2000年代、多くの国で低下している。
このなかで、日本で若年失業率が高まっている。
若者に仕事を与えられない国に未来はない。
90年代以降の日本経済のパフォーマンスは失望に値するものだった。
この大停滞は、過度な金融引き締めによって引き起こされた。
金融引き締めによる物価上昇率の低下が、名目賃金の下方硬直性によって実質賃金を高め、それが雇用と生産を削減した。
このことだけで、90年代以降の停滞の半分以上を説明できる。
名目賃金の下方硬直性は、90年代以降の大停滞、特に98年のマイナス成長によって破壊されたが、マネーサプライの低下が経済を停滞させる、それ以外の経路はそのまま残っている。
賃金の硬直性と衝突した金融政策の大冒険そもそも、1%の名目賃金の下方硬直性を破壊することが必要だったのだろうか。
物価上昇率が、これまでどおりの2〜3%であれば、日本の雇用システムはそれほど大きく変化する必要もなかっただろう。
インフレ率をゼロまで引き下げることは、本来するべきではない金融政策の大冒険だった。
賃金を下げても、過去の名目の債務はそのままである。
必要なことは、名目賃金のカットではなくて、物価の上昇を通じた実質賃金のカットである。
名目賃金の下方硬直性と、債務契約が名目でなされることを考えれば、人びとが当然と受名目賃金の下方硬直性を破壊したところで、90年代の日本の低成長をもたらした他の金融的要因が消滅するわけではない。
ゼロではなくて、2〜3%のインフレ率を目標とすることが、より高いインフレ率をもたらすことなどありえない。
たしかに、自然失業率以下の失業率を目標としてインフレ率を操作すれば、当初考えていた以上に高いインフレ率をもたらすことになる。
これは60年代末に実際に生じたことである。
しかし、目標がインフレ率自体であるのだから、2〜3%のインフレ率を目標とすることがより高いインフレ率を招くことはない。
け入れていたインフレ率(それはおそらく2%前後となろう)を目標とした金融政策が必要だったのではないだろうか。
しかも、雇用の停滞、特に若者の雇用の停滞は、経済停滞をさらに永続化させる影響をもつ。
労働の技能は、その大部分が働いて得られるものである。
働けなければ、技能を身につけることはできない。
すなわち、日本の労働生産性は長期にわたって停滞することになる。
こう考えると、日本の大停滞は、1930年代の世界大恐慌や、中国の文化大革命にも比する悲劇である。
ほどけない日本のシステムがもたらした停滞。
しかし、物価下落が実体経済に影響を与えるチャンネルはほかにも考えられる。
それらは、デフレ期待、実質利子率の上昇、名目の債務契約のチャンネルなどである。
デフレ期待のチャンネルとは、物価が下落すれば、さらに下落するだろうという期待を生み、支出を先延ばしにする効果である。
このとき、債務があれば、この過程は増幅される。
実質利子率上昇のチャンネルとは、物価の下落が実質の利子率を上昇させ、投資を削減する効果である。
また、物価の思わぬ変動があるときには、名目の債務契約が債務者から債権者への所得移転をもたらし、これが実質効果をもたらすことがある。
1990年代の停滞の要因として、あとではデフレをもたらした金融政策、デフレ状況のなかでの名目賃金の硬直性が実質賃金を上昇させ、雇用と生産を削減することをあげた。
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